令和4年度 茨城県産業安全衛生大会が開催されました。Withコロナ下での開催のため、感染症防止に万全の対策を講じながらの開催となりました。
3年ぶりの会場での大会実施でしたので、入場時の検温、消毒、会場の換気、距離を空けての指定席制にするなどの苦労はありましたが、何とか無事にコロナ以前と同じ形で実施出来たことについて、皆様に御礼申し上げます。
以下に大会の様子、講演の要旨を報告させて頂きます。
開会の様子 村島労働基準協会連合会会長による開会挨拶
石津建災防茨城県支部長から開会の言葉を頂き、村島労働基準協会連合会会長から開会の挨拶を頂きました。
西松建設の厚生労働大臣賞披露 労働局長表彰
以下被表彰事業場は末尾の大会次第に掲載されています。
労働基準協会連合会長賞 建災防茨城支部長賞
陸災防茨城支部長賞 林災防茨城支部長賞
港湾災防東京総支部日立支部長賞 港湾災防千葉総支部鹿嶋支部長賞
受賞者代表大成建設岩瀬様謝辞
下角労働局長挨拶 榊原部長(県知事代理)挨拶
〇労働局長からは、13次防5ケ年計画を終えるにあたり、労災5%減少の目標達成は茨城では困難でり、死亡災害は4人も増加して23人になっているとの報告があり、今後一層の災害防止への協力依頼がありました。
〇県知事祝辞では、精神障害の労災請求も増えており、茨城カウンセリングセンターの利用と働くポータルサイトでのモデルケースを見て頂きたい事、10月の茨城働き方改革推進月間の協力依頼がありました。
笹嶋経営者協会長祝辞 内山連合茨城内山会長祝辞
〇経営者協会笹嶋会長から安全衛生法制50周年ですが、現状の安全衛生には、化学物質管理、アスベスト問題、ストレスチェック、両立支援、外国人問題等多様な課題が山積しており、引き続きの災防の意義を求めて行きたいとの祝辞がありました。
〇連合茨城内山会長からは、連合の現状が439組合、135,791名の組合員を束ねているが、連合としては組合員だけでなくすべての労働者の代表の立場に立って行動したい。組合のあるなしにかかわらず、派遣、下請け等の労働者身分の違いにかかわらずすべての労働者が安全と健康が実現できるように、本安全衛生の事業を実現して頂きたい旨の祝辞がありました。
講演「(わかる)両立支援の取り組み」
茨城産業保健総合支援センターの茨城産業保健総合支援センターの産業保健専門職 関水仁美 様から表題のご講演を頂きました。
〇最初に、茨城産業保健総合支援センターがどのような事業を行っているかの説明を頂き、中小企業に対してコストもかからずにいろいろな支援をしていることが理解出来ました。もっともっと気楽にセンターを利用すべきだと感じました。
〇本題としての、「両立支援」については、そもそも論としての国の施策に「労働力不足」があり、女性の活用、高齢者の活用、両立支援、障がい者雇用、外国人活用による労働力の確保の必要性があるなかでの、両立支援には、労働者側にも継続的賃金が得られ、働くモチベーションが持てるメリット、企業側にも健康経営への実現により労働力不足が補えるなどのメリットもあり、WinーWinの関係で両立支援が可能であることの意義を教えて頂きました。
〇そのためには、両立支援の制度仕組みを知り、両立支援用の「主治医の診断兼意見書」を利用してトライアングルな「両立支援プラン」を支援センターが作成することで、本制度の普及が図られんことを望まれました。今後も益々人手不足が大きくなる中での解決策の一案として、病を持っていても働く意欲のある方や、人生経験豊富な高齢者を両立支援の制度を生かして活躍して頂くこと意義を紹介頂きました。
特別講演 「スポーツの未来」ー新たな価値の創造ー
特別講演はソウルオリンピックの柔道女子52キロ級銅メダリスト山口香様(筑波大学教授)が登場されました(以下、「先生」と言います。)。先生は2年前のコロナ時期にお話し頂く予定が伸び伸びになっての登場で講話を長らくお待ちしたため、その間、21年のオリンピック等社会情勢の変遷を踏まえての講演を頂きました。
先生からは多くの感銘深いお話を頂きました。いくつかの頂いた教訓を申し上げますと、
〇先生は1964年生まれで、6歳から姿三四郎にあこがれて柔道を始めたそうです。当時は「道場では女子はダメ」と言われていた時代ですが、美空ひばりの「やわら」や柔道の創設者加納治五郎先生が女性にも柔道をやって貰いたいと思っていた時代背景を受けて、「第1回全日本女子柔道選手権」において最年少者での優勝をされました。
〇「日本の伝統的な指導法」としての「道」の文化については、「稽古と型」があること。そのための修行プロセスとして「守・破・離」について教えて頂きました。「守」とは基本型の取得、「破」とは基本の型を破ること、そして「離」れて学びが自由に羽ばたくことです。敢えてこれを私達に関わる安全衛生の「道」に変換すれば、指差呼称やKYTと言った基本型を身体で覚えるまで稽古すること。その上で、基本型を超えてヒヤリハットやリスクアセスメントと言った応用に対処できるようになること。最後にこれらの基本・応用を超えて、想定外のリスクにも柔軟に対応できるレジリエンス力を身に着ければ、安全衛生のメダルも夢ではないと言うことではないかと思いました。
〇スポーツにしろ何にしろ「力」を持つと使いたくなる欲望に自律的な対処が出来るかということについてを教わりました。私たちが柔道にしろ何にしろ身に着けた力を「精力善用、自他共栄」に使い「精力悪用、自己中心」としない(嘉納治五郎の理念)「ミッションステートメント」を堅持しなければならないことを教わりました。
〇また、上野千鶴子東大名誉教授の東大入学式の祝辞、「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。」という引用文から、私達が東大卒とか、メダリストとか、教授とかいった社会的特権を持ったことからくる驕りを厳に戒めることについて教えて頂きました。
〇オリンピック選手は「勝つ」ことのために長い年月を費やしており、「がんばれば不可能なことはない」と言われるのかと私は思っていました(文責M)が、先生は物事の真相がよくわかっておられる方だと感銘を受けました。スポーツで「勝つ」ために自律制御しなければならないこと(ゴルフの例)、村上選手の56号のように勝だけでなくギリギリの限界の向こうにある「楽しく」出来るスポーツの本当の意味、スポーツの多様性と調和についても教えて頂きました。
〇先生は選手のコーチングをされており、現代のオリンピック選手を育てるには、監督、コーチ、技術者等非常に多くのチームが一つになって進めるチームワークが欠かせないことを教えて頂きました。また、先生はスポーツ以外にもいろんな社会進出されている中で、ラグビールールを例にボールは後ろにパスして物事を進めなくては何事も立ち行かない組織の動かし方や人間関係に係る極意も教えて頂きました。
〇このほかにも多くの感銘深いお話を頂きました。本日、出席できなかった方はネットからでもいいですから、先生の足跡を追ってみてはいかがでしょうか(文責M)。
小倉陸災防茨城支部長による大会宣言
労働災害の防止と「安全」、「健康」、「快適」な職場づくりに全力で邁進することの大会宣言案が採択されました。
(下の資料最終頁に「大会宣言」があります。)
桑名港湾災防東京総支部日立支部長の閉会の言葉で大会は無事終了しました。